JIDA デザイン教育研究会 アーカイブ


デザイン教育の現場から1999

 

第二回:加藤雄章さん    (多摩美術大学)

JIDA教育研究会 第59回ミーティング レポート

企画「デザイン教育の現場から」第二回

日時:平成11年6月25日 於JIDA事務局

参加者:加藤、染谷、谷津、野中、藤田

■「基礎デザイン:デザイン教育とデザイナー教育 」

スピーカー:加藤雄章さん(多摩美術大学、千葉工大講師)

加藤:私は現在多摩美術大学の八王子と上野毛、それから千葉工大でデザインの授業を持っています。基本的に基礎デザインの演習をやっていますが、これは以前から大学の3年生4年生になってデザインの基本ができていない学生をみて、これではいけないと感じたことから始まっています。

 今回ご報告するのは、多摩美術大学八王子校の情報デザイン科1年前期の演習と、上野毛のプロダクトデザイン科の演習です。まず技術や情報について専門的なことを学ぶ以前にデザイナーとして必要な「ものを観察し、表現すること」を「石と向かい合う」という課題で体験してもらいました。まず石をひとつ探してこさせて、自分の選んだ石をただ眺めるだけでなく握ったり撫でたりしながら、眼で見るだけでなく心で見るようにしむけて、それを鉛筆で描いてもらいます。次にその石を自分の好きな素材を使って自由に描写させます。絵の具を使ったり、コラージュを作ったり、最後に最初にモチーフとしてあった石自体に自分の感じた印象を描き加えさせました。

 はじめの描写の段階ではいわれたとおりにデッサンしたような作品を持ってくる子が多くてやり直させたりもしましたが、次の自由描写あたりでだんだん一人一人の個性が表れた表現が見えてきます。作品を全部スライドにして学生に見せまして、「ただの石ころの描写でも、みんなの作品の中に一つでも同じものがあるか?」と聞くと学生が「ありません」と答える。そこで、「これが君たちなんだ。君たちはみんな一人一人違うものを持っている。それを大切に育てていかなくてはいけない」ということを彼らに言うわけです。

 また、これは別の演習ですが、学生に一本ずつ白墨(チョーク)を渡しまして、「このチョークを削って造形をしてごらん」ということをやりました。学生も最初はガヤガヤと騒ぎながら始めるんですが、次第に「チョークを削る」ということに集中し始めますと相当に熱中してのめりこんでいきます。削る道具は自由に選ばせましたが、「正しい姿勢でチョークに向かう」、これは心構えを含めて対象物にまっすぐ向かうと言うことですが、それから「下に緑色のボードを敷いて作業をするように」、これは一番目が疲れないのが緑色の紙を背景に置いておくことなので、この二つを伝えて実習をさせました。たかだか一本のチョークを削るだけなんですが、はじめ力の加減がわからなくて折れたりしているうちに、だんだん真剣に作業にとりくんで実に様々な表現を学生たちが生み出してくれます。また、作品をスライドにして客観的に見せると、彼らは自分の仕事に感動するのです。

加藤:また、別の演習では、学生たちに自由に木材を選ばせまして、基準の寸法の角材にしたものを3本用意させて、それぞれの角材の長辺を1R、2R、3R、4R、と5R、6R、7R、8R、と9R、10R、12R、15Rに削ってもらいました。ゲージをあてて辺の始まりと終わりでRがダレたりしないように注意しながら作らせて、「これを将来君たちがデザイン作業をしながらもののRを決めるときにもう一度触ってどんなRがそのデザインにふさわしいかを決める物差しに使いなさい」というものです。最後にRをつけた角材のケースを自分で作ってこさせたのですが、このケースにも一人一人の学生の個性がよく表れていて、じつに楽しいものばかりです。

染谷:加藤さんの授業の紹介を見て、これはデザイナーのふるさと(原体験)をつくってあげるということだと思いました。逆に感動の原体験がない人間がデザイナーになってしまうことはとても危険なことですね。

加藤:私はデザインの教育には「デザイン教育」と「デザイナー教育」があると考えているのですが、これはつまり、デザインの基本的な考え方や姿勢を学ぶのが「デザイン教育」で、プロのデザイナーとして技術的に必要なことを学ぶのが「デザイナー教育」と定義しているわけです。その中で、基礎になる「デザイン教育」:ベーシックデザインをしっかりと伝えていくことは、家(デザイナー)ができあがった時には見えなくなってしまう土台のようなもので、社会的にも注目されにくい部分ですが、やはり誰かが伝えなければいけないことだと思っています。

DATA:多摩美術大学

■所在地:

〒158-8558 東京都世田谷区上野毛3-15-34(本部)

Tel 03-3702-1141

■デザイン学部:

192-0394 東京都八王子市鑓水2-1723

URL: http://www.tamabi.ac.jp

八王子・情報デザイン学科

上野毛・デザイン学科プロダクトデザインコース

■八王子

情報デザイン学科(一学年100名)学科長:石田晴久

■上野毛

デザイン学科: 学科長:山中玄三郎

ビジュアルコミュニケーションデザインコース

デジタルグラフィックデザインコース

プロダクトデザインコース

環境デザインコース

 


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