JIDA デザイン教育研究会 アーカイブ


デザイン教育の現場から1999

 

第一回:染谷 昇さん    (東京デザイナー学院)

JIDA教育研究会 第58回ミーティング レポート

 

企画「デザイン教育の現場から」第一回

日時:平成11年5月28日 於JIDA事務局

参加者:加藤、染谷、野中、藤田

 

■「地球からイメージされるデザイン 」

スピーカー:染谷 昇さん(東京デザイナー学院講師)

染谷:私が授業を持つ、東京デザイナー学院の工業デザイン科の授業で、昨年「地球」をテーマに課題をだしました。その報告です。

 学生達に「地球の画像をみせて、そこからのイメージで作品を創りなさい。」が課題です。作品は商品でも何でもよいといってあり、発表形態も自由です。対象は二年生で専門学校なので卒業製作の前の段階です。スキルアップを狙ったハード指向の課題と、コンセプト指向の課題がある中で、コンセプト指向の自分のイメージから具体的な形にまとめ上げる事が狙いです。抽象的なところからイメージを作り上げそれを具体的な形にして表現する経験をつませかったのです。

 宇宙から見た「地球」の写真だけをみせて、後は自由に進行しなさいと言ったので相当戸惑ったようです。学生達は色々なものを創ってきました。

 この年の東京デザイナー学院では工業デザイン科を私を含めて3人の講師が曜日を違えて同じ課題を指導していたのですが、3人それぞれ微妙に持ち味に違いがあって面白かったと思います。

 私がこの課題で期待していたのは、環境問題へのアプローチが出てくることだったのですが、見事に期待はくつがえりました。直接的に「環境問題」をシステム、ハードに落しこんだモノはなかったのです(勿論間接的には環境問題につながるのですが)。最初これははショックでした。自分の頭の中には「地球=環境」という図式が出来ていたんですから。

 しかし学生達の作品は面白かったんです。「地球=環境」という連想で固まっていた私にくらべ、学生達の発想は自由で一人一人違ったイメージが出てきて驚かせられました。予想を見事に裏切られたという点で、課題としては成功だと思います。学生の豊かな創造力が確認できて面白かったと思います。

 

染谷:この課題では、最終的に作品はモノに落とし込んでいなくても良いと言うことにしてありました。アイディアのプレゼンあり、立体作品ありという講評でしたが、作品のいくつかを紹介しますと、たとえばある女子学生は「地球の自転を感じる装置」というもののアイディアをプレゼンしました。「要するに我々はじっとしていても地球と一緒に猛スピードで自転しているじゃないか」と、それを擬似的に体感できる装置を考えたと言うことです。この子はかなり出来るほうで、まとめかたがうまいんです。

 別の学生は「母なる宇宙が地球を抱いている」というようなイメージで作品を作ってきたんですが、私は初めこの手の模型は何か部品を買ってきたのかと思ったら、ちゃんと自分で苦労して作ったと言うんです。拙いところもありますが、自分のイメージを何とか伝えようとする努力が作品にも現れていました。

野中:伝えたいことを何とか伝えようと苦労することは、デザイン教育の上ではいつの時代でも大切ですね。

染谷:こちらの子は地球から溶岩とかマグマを連想したようです。プレゼンでは特別に許可しまして、写真のようにタバコの煙で光の効果を表現しまして、これもなかなか独創的です。

 その他にも色々な学生がいるんですが、やはりそれぞれ、CGの得意な子はCGを使ってくる、模型づくりのうまい子はやはりそういうところに力を入れる、という具合です。やはり今時ですから、コンピューターを使った作品は多いですが。それから、これも現代の一つの傾向かもしれませんが、いわゆるプロダクトデザインを志向する学生より、自分の世界の方へ行こうとする子が多いようです。

 正直なところ、出来る子は放っておいてもできるんですね。問題なのはやはり出来ない子なんですが、それでも要領の悪い子がその子なりに苦労して自分の作品を仕上げていく過程で、表現することの全体的なノウハウを学んでくれるんじゃないかと思います。だから学校は彼らが成長するための触媒であればいいと、私は考えています。

加藤:しかし、やはりデザイン教育という以上、プロとして最低限教えなければいけないこともありますね。ですから「何を教えるか」という学校のポリシー如何によって染谷さんの課題の意義が変わると思うんですが。

染谷:非常勤講師の立場では学校の方針に全体的にコミットするのは難しい。まずは自分の出来ること、持っているものを学生にぶつけていくという姿勢で私はやっています。

DATA:東京デザイナー学院

 

■所在地:〒101  東京都千代田区 神田駿河台2ー11

     Tel 03-3294-2831

     URL: http://www.tode.ac.jp

■学生数:泄煤i昼間部)定員4160名 、

     部(夜間部)定員1240名 、総定員5400名

     工業デザインコースは一学年15名程度

■プロダクトデザイン科:  学科長 加藤 博行

     工業゙デザイン (昼2年)、福祉用具゙デザイン(昼2年)、

     カーデザイン (昼2年)、スポーツグッヅデザイン (昼2年)、

     ファニチャー゙デザイン (昼2年)、

     ライティングデザイン (昼2年)、雑貨゙デザイン (昼2年)

 


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